受験で寄せられる悩みは、たいがい次のようなものです。

1.受験したい(塾へ行きたい)と言うわりには学習意欲が足りない
2.入塾時と比べてクラス(順位)が下がった(今のクラスでは心配という不安感)
3.反抗期で、親に教わることに抵抗する(何とかしてあげなければならないという焦燥感)
4.やるべきことが多く何をどのようにすべきかが分からなくなったり、難易度が上がったりしてきたなどの理由で、意欲が減退してきた(意欲はあるが自信がない、絶対解けるような問題もとれなくなる)
5.塾の復習をすると半分も分かっていないか、初めからやり直さなければならない
6.学習習慣がつかない(放っておくと勉強しない)
7.すぐ「分からない」と言う(教えてもらえないと放り出す)
8.時間をかけて勉強しているが成果がでない
9.基本的な分野や得意な分野は意欲的だが、それ以外は逃げ腰
10.応用問題だと手が出せない

これらの問題を串刺しにする視点は、「当の本人がどう考えて行動するか」ということ。当の本人の力を発揮できるようにしないと根本的な解決になりません。

小さいときから親がつきっきりで教えると自分から勉強しなくなる、というのはよく知られている話です。その延長線上で、学校や塾で宿題を出されたときに、何ができるようになるかを考えず、宿題を終わらせただけで勉強した気分になる。これまで何を学んできたかをすぐ忘れるから、これからどうして良いのかも自分で判断できない、ということになりがちになる。さらには、「そんなことはやめなさい」「言われたことをやりなさい」と言われ続けると、子どもたちは自分がしたいことをすることがわがままに思えたり、仮にやってしまったときの失敗を恐れたり、ということにもなりかねません。

自分の意見が全く尊重されない子どもは、困ったことがあっても自分ひとりで抱え込んでしまったり、遊びで塾の授業をすっぽかしたりとか、宿題やプリント類を隠す、なんてことをしでかすこともあります。自分の意見が通らないのであれば、自分や人を犠牲にしてでも自分の意見を通したくなるのは自然なことでしょう。

このようなとき大人は、何度言っても子どもが言うことをきかないなら、もっと強く言わないといけないと思いがちです。「負けるな、強い意志を持て、自力でやれ、ストレスに打ち勝て」と。しかし、そもそも自分の意志が尊重されない状況にありますから、自分の頭で考えて対処できるはずもありません。

上述の1~9のような困難な状況に子どもを立ち向かわせるには、大人が子どもに対して「どんなことでもチャレンジしてみろ、何とかなる、困ったら助けを求めろ、楽しもう」という協同的態度を表明することが必要です。大人は子どもに助けを求められるとそれにすぐに応えないといけないと申し訳ないような感覚になります。しかし、そこで子どもと一緒に踊ってしまっては何も残りません。あくまで、子どもが目の前の現実を直視し、何か1つでも自力で変えることができるように導くことが子どもの助けになります。

具体的に言うと、大人がやることをただ真似させるとか、子どもが助けを求めたらすぐに教える、というのは子ども主体とは言えません。これでは、すぐに「分からない」を連発する子どもにしてしまうだけだからです。「分からない」と言えばすぐに教えてくれることを学習している。しまいには、「もし教えてくれないなら、放棄する」という強迫まがいの手段を取ることもあります。

望ましい問題解決のプロセスは、解決に至る一通りの手順を説明した後で、ゴールを示しながら一緒にとりかかってみる、そして、適宜アドバイスをしながら手を離せそうなら離す、という具合です。できれば、達成できたところまで付き合ってあげたいところですね。

なお、10歳くらいまでに、自分で出したものは自分で元に戻す、食事をダラダラ食べない、宿題はその日のうちにやる、就寝時間と起床時間を自分できちんと管理する、忘れ物はしない、といった基本的なメリハリのある生活習慣を身につけさせることは後々子どもの財産になるでしょう。

余談ですが、子育てに一段落すると、これまでいろいろな人に相談したり手伝ってもらったりしてきたけれども、結局は、黙って見守ることが子どもにとって一番良かったのかもしれない、と思うようになると言われます。子どもは、食べさせてくれるが愛情に乏しい親よりも、食べさせてくれなくても愛情がある親を好む、とも言われます。ヒポクラテスは言います、「助けよ。さもなくば、傷つけるな」と。

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